被覆アーク溶接とは?| 電気のアークを利用して金属をつなぐ溶接方法
金属と金属をつなぎ合わせる「溶接」には、さまざまな方法があります。
その中でも、古くから幅広い現場で使用されているのが被覆アーク溶接です。
溶接棒と母材の間にアーク(電気の放電)を発生させ、その熱によって金属を溶かして接合します。
今回は、
被覆アーク溶接とは?
どのような仕組みなのか
特徴やメリット
TIG溶接・半自動溶接との違い
主な用途
作業時の注意点
について、分かりやすく解説します。
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被覆アーク溶接とは?
被覆アーク溶接は、被覆材が付いた溶接棒と金属の間にアークを発生させて溶接する方法です。
アークによって発生する高温の熱で、溶接棒と母材を溶かし、冷却・凝固させることで金属同士を接合します。
溶接棒の周囲には「被覆剤」が付いています。
この被覆剤が溶接中にガスやスラグを発生させ、溶接部分を大気中の酸素や窒素などから保護します。
「アーク」とは?
アークとは、電極と金属の間で発生する強い電気の放電のことです。
このアークによって非常に高い温度が発生し、金属を溶かすことができます。
つまり、
電気のエネルギー → 熱エネルギー → 金属を溶かす
という仕組みです。
被覆材にはどんな役割がある?
溶接棒の周囲に付いている「被覆材」は、単なるコーティングではありません。
主に次のような役割があります。
◎ 溶接部を保護する
溶接中にガスを発生させ、溶融金属を大気から保護します。
◎ スラグを形成する
溶接後に表面を覆う「スラグ」を形成し、溶接金属を保護します。
◎ 溶接を安定させる
アークを安定させ、溶接作業をしやすくする役割があります。
溶接後に表面に残ったスラグは、ハンマーやワイヤーブラシなどで除去します。
被覆アーク溶接の特徴
◎ ガスボンベが不要
TIG溶接やMIG・MAG溶接などとは異なり、基本的にシールドガスを使用しません。
そのため、ガスボンベを設置しにくい場所でも作業できます。
◎ 屋外作業に強い
風がある場所ではシールドガスを使用する溶接方法は影響を受けやすくなります。
被覆アーク溶接は溶接棒の被覆材によって溶接部を保護するため、屋外や現場での溶接にも適しています。
◎ 機動性が高い
必要な設備が比較的シンプルなので、建設現場や設備工事など、機械を移動させながら行う作業にも向いています。
被覆アーク溶接のメリット・デメリット
項目 | 特徴 |
設備 | 比較的シンプル |
ガス | 基本的に不要 |
屋外作業 | ◎ |
機動性 | 高い |
薄板加工 | △ |
溶接速度 | 比較的遅い |
作業者の技術 | 重要 |
スラグ除去 | 必要 |
TIG溶接・半自動溶接との違い
| 項目 | 被覆アーク | TIG | 半自動 |
| 電極 | 溶接棒 | タングステン電極 | ワイヤ |
| シールド | 被覆材から発生するガス等 | アルゴン等 | CO₂・混合ガス等 |
| ガスボンベ | 基本不要 | 必要 | 必要 |
| 屋外作業 | ◎ | △ | △ |
| 外観 | 〇 | ◎ | 〇 |
| 薄板 | △ | ◎ | 〇 |
| 主な用途 | 建築・設備・補修 | 精密溶接 | 構造物・量産 |
どんな製品に使われる?
建築鉄骨
配管
機械設備
建設機械
大型架台
補修・修理
屋外構造物
特に、現場での溶接や厚板の溶接で活躍しています。
精密板金ではどう使われる?
精密板金では、薄板を扱うことが多いため、被覆アーク溶接よりもTIG溶接や半自動溶接などが選ばれるケースが多くあります。
一方で、製品の大きさや板厚、使用環境によっては被覆アーク溶接が適している場合もあります。
重要なのは、
「どの溶接方法が一番優れているか」ではなく、製品に合った溶接方法を選ぶこと です。
被覆アーク溶接で注意するポイント
● 溶接棒の管理
溶接棒が吸湿すると、溶接品質に影響する場合があります。
種類に応じた保管・乾燥管理が重要です。
● スラグの除去
溶接後に残ったスラグを十分に除去しないまま次の溶接を行うと、欠陥の原因になることがあります。
● 溶接条件の管理
電流・電圧・溶接速度などの条件を適切に設定することが重要です。
● 安全対策
溶接時には強い光や高温のスパッタ、ヒュームなどが発生します。
適切な保護具や換気設備を使用し、安全に作業する必要があります。
よくある不良
被覆アーク溶接では、条件や作業方法によってさまざまな溶接不良が発生する可能性があります。
例えば、
アンダーカット
ブローホール
スラグ巻込み
溶込み不足
溶接割れ
などがあります。
溶接条件だけでなく、母材の状態や溶接棒の管理、作業者の技術なども品質に大きく影響します。
被覆アーク溶接は、
溶接棒と母材の間にアークを発生させ、その熱で金属を接合する溶接方法です。
被覆アーク溶接のポイント
シールドガスを基本的に使用しない
屋外や現場での作業に強い
設備が比較的シンプル
厚板や大型構造物に適している
溶接後のスラグ除去が必要
TIG溶接や半自動溶接など、それぞれの溶接方法には得意・不得意があります。
材料・板厚・製品形状・使用環境などを考慮し、最適な溶接方法を選択することが、高品質なものづくりにつながります。
