真鍮の比重とは?|精密板金で知っておきたい“重さ”と使いどころ(比重 8.43)
これは水(比重1.0)と比べると約8.4倍、アルミ(約2.7)よりずっと重く、鉄(約7.85)よりやや重い数値です。
比重=「同じ体積あたりの重さ」を示す基本データで、素材選定や設計の初期判断に大きく影響します。
弊社で使用する真鍮は、銅(約60%)と亜鉛(約40%)のC2801材を使用することがほとんどです。
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真鍮が選ばれる理由
真鍮の比重は、金属加工においても、製品の動きやバランスの調整や
美しい外観・優れた加工性・電気伝導性・防食性のバランスが良い素材です。
精密板金の分野では、次のような用途でよく採用されます。
飾り金具や外観部品(見た目が重要な筐体の一部)
コネクタ・端子などの電気・電子部品(導電性と耐久性)
ネジ・ファスナー、摺動部の中小部品(加工精度が出しやすい)
音響機器や計測器など、仕上がりの美しさが求められる製品

比重8.43が設計に与える影響
比重が高い=同じ体積で「重く」なるため、設計の観点では以下を意識します。
重量設計:筐体や可動部分に真鍮を多用すると製品全体の重量が増える。持ち運び性や搬送コストを検討する必要あり。
慣性・振動特性:重さがあることで安定性や低振動化に有利な場合がある(据え置きの機械フレーム等)。
強度・剛性:同じ体積では鉄やステンレスと比べて素材特性が異なるため、部位ごとに最適な材料選定が必要。
加工性と現場での扱い方
真鍮は「加工しやすい」金属の一つで、切削性や曲げ、プレス加工でも安定して高精度を出せます。ただし、現場で押さえておくべき点があります。
切削やネジ切りが得意:切粉の除去や刃物の選定で高品位な面仕上げが可能。
曲げ・プレス時のひび割れ注意:合金の種類や板厚、曲げ半径によっては割れやすくなるため、曲げ順・金型の設計が重要。
表面処理(めっき・クリアラッカー等):黄銅特有の色味を活かす場合と、耐食性向上や導通安定化のためにめっき処理を施す場合がある。めっきの前処理(脱脂・水洗い)が品質に直結する。
異種材接合:アルミや鉄と組み合わせる場合、接触腐食(電食)や熱膨張差に配慮する。
材料選定のポイント(設計者向け)
精密板金で「真鍮を選ぶべきか?」の判断基準は次の通りです。
1. 外観・意匠性が重要か → 真鍮は色味が良いため最適。
2. 導電性・接点特性が必要か → 電子部品や端子なら真鍮は有力候補。
3. 重量が許容範囲か → 製品全体の重量増が問題ないか確認。
4. 耐食性と仕上げ → 屋外や高湿度環境なら表面処理を検討。
コストとリサイクル性
銅を主成分とする真鍮は材料費がアルミや一部の鉄材より高めになる場合がありますが、加工性の良さで工数が下がる、
仕上がりが良く付加価値が高まるケースも多いです。また、リサイクル性が高く再利用がしやすい点もプラス材料特性です。
比重8.43を理解して“最適な使いどころ”を見つける
真鍮(比重8.43)は「重さ」が特徴の一つでありながら、美観・加工性・導電性といった強みを持つ素材です。
精密板金の現場では、比重という数値を元に「どこに使うか」「どのように加工するか」を決めることで、
製品の品質とコストのバランスを最適化できます。設計段階で素材の比重を意識すると、仕上がりや使い勝手に直結する設計判断ができるようになります。